回答:四宮和彦(清和会)
1.この問題は、なぜ起こったとお考えですか?
(回答)まともな自治体であれば、起こり得ないことが度々起きておりますが、その原因は、調査しない限り断定的なことは申し上げられません。少なくとも、市長や関与した職員だけでなく、庁内全体に、「行政の正当性」又は「外形的信頼」を担保するものが「行政手続」であるという認識に欠けていることが原因ではないかという気がしています。この点は、佃弘巳前市長の12年間に渡る市政運営のあり方によって、本市の行政システムが法治主義から人治主義とも言うべき恣意的な運営に傾斜し、変容してしまったことから、これを引き継いだ市長はじめ、行政職員が、「権限」を持つことの意味を履き違えてしまった可能性があります。強いて言えば、こうした行政システムのあるべき姿に対する想像力と哲学の欠如がもたらした事態であると考えます。
2.この問題の当事者である市長と建設部の担当職員1人は、しかるべき責任を取ったとお考えですか? まだ取っていないとすれば、どのように責任を取るべきとお考えですか?
(回答)これからの検証結果によるので、現段階では、責任の所在・内容自体が確定しておらず、断定的判断はできないと考えます。仮に、明白な、法令違反、手続違反があれば、法に従って、その責めを負うべきであると考えます。また、政治倫理等に照らして道義的責任が明確となれば、市長自身が、その出処進退について決断するか、有権者の意思・判断に委ねるべき問題であると考えます。職員について、その非が明らかとなれば、懲罰委員会を設置し、そこにおいて審査の上で、人事上の処分について判断されるべきものであると考えますが、人事上の処分については、議会の所掌事務ではないため、我々の仕事は、事実関係の検証に留まることを申し添えます。
3.この問題は、市長および市のリスクマネジメントの意識の低さと仕組みの不備をも示していると思いますが、貴職はどのようにこの問題をとらえ,今後どのように対処していくべきとお考えですか?
(回答)概ね同意します。危機管理意識の希薄さ、行政目的達成のために障害となるリスクの低減のための内部統制制度の整備を怠ったこと、さらに、そうしたものの必要性・重要性についての認識の欠落が招いた結果であると考えます。今後必要なことは、本件に関する検証を行った上で、内部統制制度として何が機能していなかったのか、どのような機能が必要であったのかを明らかにし、どのように制度整備をしていくべきか、調査・研究していくことが必要であると考えます。
4.今回のような問題の再発防止のためには,どのような対策が必要とお考えですか?
(回答)まずは、繰り返しになりますが、行政組織における内部統制制度の整備を条例、規則等で明示的に成文化し、これに基づく行政執行体制を確立することが必要であると考えます。また、市長自身に、コンプライアンス研修が必要であると考えます。また、行政手続を無視した恣意的な市政運営が認められた場合には、即座に第三者委員会等(議会における、いわゆる百条委員会等を含む)を設置し、その検証作業を公開の場で行うことを義務づける制度整備も一つの抑止効果になると考えます。同時に、情報公開制度の運用面での改革を図ることも必要であると考えます。
5.事業者が近日中にあらたな訴訟を起こす可能性もあります。市はこれへの対応を一層強化する必要があると思います。貴職は今後どのように市が対処していくべきとお考えですか?
(回答)事業者が近日中に訴訟を起こす可能性については、それほど高くないと考えています。その理由については、再び、河川占用不許可処分取消請求訴訟が提起された場合、既に、高裁判決が確定しており、その既判力を覆すだけの、新たな争点を提示することは難しいと考えられるため、提訴しても、却下されることになるであろうと思われるからです。また、仮に、「確約書」に係る債務不履行につき損害賠償請求を提起する民事訴訟を想定した場合、確約書自体について、これが、正規の行政文書としての事務手続を経ておらず、小野達也個人と事業者との「密約」に過ぎないことについて、事業者は悪意である(事情を知っている)ことから、事業者自身が確約書の有効性を主張することは認められないことが原則であると解されます。それでも、いわゆるスラップ訴訟の可能性は、未だ残りますが、長野県伊那市における、メガソーラー訴訟では、反対運動を行っていた住民に対し、事業者が、損害賠償請求を行うスラップ訴訟を仕掛けましたが、長野地裁伊那支部では「裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く」として、「違法な提訴により被告が精神的苦痛を被った」ことを認め、慰謝料を求める被告の反訴請求を一部認容する判決を下しています。つまり、相当に合理的根拠のある、正当な訴えでない限り、事業者自体が自爆する可能性が高いものとなるということであり、訴訟リスクは提訴する側にも同様にあることを認識しなければなりません。ましてや、地方公共団体相手にスラップ訴訟を仕掛けるなどということは、迂闊にできるものではなく、事業者が自爆する可能性は更に高くなります。東京高裁判決においても、事業者が度々行政指導に従わなかったことについて、河川占用不許可処分を受けることとなったのは「自業自得である」と判決文中の説示の中で、敢えて言及しているのであり、この点が覆る可能性は極めて低いと言えます。事業者側の代理人がまともであればそのような訴訟を仕掛ける可能性は極めて低いと言えるでしょう。逆に、こうした、根拠の薄弱な訴訟リスクに怯え、アタフタとしていること自体が、市のコンプライアンスの低さを露呈するものであり、今回の確約書問題を起こす一因になった可能性を考えなければなりません。スラップ訴訟の可能性は視野に入れておく必要はあるにせよ、本来は、こうしたリスク管理を行う為にこそ存在しているはずの本市の顧問弁護士に任せておけば済む話だと考えます。もっとも、現在の顧問弁護士が、法務面でのリスク管理に十分に役立っているとは言えない点は問題とすべきであると考えます。
6.市議会はこの問題で6月30日に全員協議会を開き,その後の市議会でも質問をしてきましたが、問題が十分に解明されたとはいえません。市議会が市政と行政のチェック機能を果たすには、百条委員会あるいは少なくとも特別委員会を設置して、問題を解明し対策をとっていくことが必要と考えます。市長は政治倫理審査会(以下,政倫審)にこの問題の審査を要請しています。「特別委員会設置は政倫審の報告が出てからで良い」とお考えの議員の方々がいらっしゃるとも聞いていますが,政倫審はその構成員の選任者が市長であり、権限も限定されていることから、その審査には限界があると考えます。市議会が独自にその権限でこの問題を深く解明し,対策を講じていくことは,市議会の責務であり存在意義を発揮することと考えています。特別委員会設置について,貴職はどのようにお考えですか?
(回答)特別委員会の設置について、9月定例会最終本会議(9/30)において、7人の議員が連名で発議することになっており、現在これに懐疑的な議員の説得に当たっているところです(2021.9.27現在)。