回答:重岡秀子(日本共産党)
1.この問題は、なぜ起こったとお考えですか?
(回答)メガソーラー建設計画が、本格的に市政の問題になってきたのは、佃市政時代の2016年だと思いますが、当初の市長の考えは、議会答弁などから察するに、少なくても反対ではなく法に則る審査をし、許可を出さざるを得なければ許可をするというものであります。
しかし、2017年の当初から住民運動が始まり、同年5月の市長選挙では小野市長も断固反対を表明せざる得なくなり、それが市議会の全会一致の反対決議に繋がりました。 ただ、一貫して市長にはこの建設計画を容認する姿勢があったことが推察されます。2019年市議が工事現場の視察をした際に業者から配布されたチラシには、2017年12月に業者の韓国本社専務が市を訪れ、森の公園の提供など開発許可のお礼としての「社会貢献事業」を約束する確約書が交わされたことが明らかにされています。そして、その3ヶ月後に宅造法の許可がされています。また規制条例の施行直前の2018年5月30日には業者が市長、並びに関係当局と会い、この計画は規制条例の対象にはしないと言っていたにもかかわらず条例の対象にしていることに抗議をし、一部の建設用地を掘削し、着工とすることを報告し、市長がそれを黙認する態度を示したとする文書(録音を文字起こししたもの)があり、これは「河川占用不許可の取り消しを求める裁判」のなかでも重要な資料となっています。
このようなことから今回の確約書問題のように秘密裏に交わされた業者とのやり取りや合意は初めてではなく、何度かあったのではないかと考えられます。(6月議会の全員協議会では市長自ら、このような非公式な面会は10数回あったと答弁している)また、業者が規制条例は適用されないという認識でいたこと自体おかしな事です。つまり、市長は市民の反対運動に理解を示し、条例違反であるということで「氏名公表」をするなど、建設を止めるような行為はしましたが、基本は建設を容認する姿勢を業者には示してきたのではないかと思います。河川の占用も実は許可する方向で進んでいたが、最終的には「不許可」とした・・・その決定には県の意向があったという説もありますが、その「ブレ」が市長にとって業者への弱み・負い目になっていたのではないかと推測します。
しかし、その背景にあるのは、そもそもこの40ヘクタールにも及ぶ大規模なメガソーラー開発計画に対する市の考え方や、この度のような訴訟に対する対応など、市政にとっての重大なリスクも伴う案件がどのような組織で、どのような集団で協議決定されていたのかという内部統制の問題にも大きな要因があると考えられます。特に市が業者から訴えられる今回のような裁判への対応は、弁護士などの専門家も交えて納得のいくまで関係者が協議し、対応を決定することが必要と考えますが、市長の胸には裁判に向かう市の姿勢や論理がしっかり落ちていなかったのではないかと思います。やはり、このような開発計画については、佃市政の際の土地購入にもみられるように、市長の権限が先行し、また非公式な場での重要なやりとりも多かったのではないか・・確約書問題はそうした一連の市の意思決定のプロセスの問題から出てきたもので、たまたま明るみに出されたものですが、同様の約束は他にもあったのではないかと推測されます。
2.この問題の当事者である市長と建設部の担当職員1人は、しかるべき責任を取ったとお考えですか? まだ取っていないとすれば、どのように責任を取るべきとお考えですか?
(回答)両者とも責任は取っていないと思います。少なくても責任の取り方は公にされていません。政治倫理審査会ではその点も審査内容になるのではないかといわれていますが、佃問題の際には政治倫理審査会の条例にこのような市長の倫理の保持に関しての審査が定められてなく、初めての事例なので懲罰などの審査は確かではありません。しかし、質問の1の回答でも書いたように確約書に至る正確な経過や賠償金というリスクがあったのかどうかの解明、市長の真意がはっきりしなければその責任の取り方に対しての見解を出すことは難しいと考えます。また本市には内部統制に関わる条例などもないことから、何に違反しているかも具体的ではなく、責任を問う基準がしっかりしていません。まず市長は政治家として、市民に負託を受けた者として、事実を語り、説明責任を果たすことが責任をとることだと考えます。職員にも責任を問うなら、その行為に至った動機や経緯を解明し、他の職員は全く関わりがなかったのかも含めて公平な責任の取らせ方が必要と考えます。
3.この問題は、市長および市のリスクマネジメントの意識の低さと仕組みの不備をも示していると思いますが、貴職はどのようにこの問題をとらえ,今後どのように対処していくべきとお考えですか?
(回答)1の質問でも触れましたが、今回のような河川占用許可など開発許可に関しては市長の権限が大きく、残念ながら「利権」という問題がつきまといやすいことも事実です。現に前市長の収賄事件という不祥事があった本市でありますが、やはり、その権限を発揮するときに、市民のための市政という観点から、適切な判断ができる仕組みが不十分であり、また職員や議会も含めた意識改革の遅れもあると考えます。河川占用許可も「市長」の権限ではありますが、それは「市長」ではなく「市」の権限であり、常に集団的な協議・決定が必要です。協議の場はあっても、市長の意向に反するような意見は出ない、出せないような場では意味がありません。また重要案件についてはできる限りの市民への情報公開や意見の聴取が必要であり、また第3者機関による監査も必要となります。そうした視点から、本市の重要課題に関する集団的な協議の状況等、総点検することからまず始めることが必要であると考えます。
4.今回のような問題の再発防止のためには,どのような対策が必要とお考えですか?
(回答)まず以上のような真相究明が基本になければ再発防止策も考えられないと思います。しかし、今提案されている内部統制制度は総務省も推奨しており、行政の基本的なあり方を制度化したもので、不祥事があった本市だからこそ積極的に取り入れていく必要があると考えます。当局も研修していると言いますが、それをどのように活かそうとしているのか,その進捗状況を議会などで明らかにしくことや、まさに確約書に絡む訴訟対策などで、内部統制がどのように機能していたのかの検証も真っ先にやらなければならないと思います。
私たち会派は収賄事件直後に、内部統制制度のなかのひとつである「公益通報制度」について先進事例を視察し、議会でも提案してきました。それは市長や職員などによる行政の不正・問題を見つけた時に、内部告発しやすい制度であり、弁護士を中心として、告発者が不利な状況におかれないよう保護しながら、問題の検証、解明をし、解決を図っていく制度です。これは一例ですが、やはり抑止力として内部統制制度を伊東市にあった形で確立していくことは重要と思います。しかし、基本的に市民や議会がこの問題をうやむやにするようでは、再発防止策の確立も難しいと思います。根本的な問題は市民、選挙民にもあり、市長の不正に対しても許容する空気があります。市長・職員・議会を浄化していくには外圧も必要だと考える事から、市民も含めた内部統制制度の研究会も必要かもしれません。
5.事業者が近日中にあらたな訴訟を起こす可能性もあります。市はこれへの対応を一層強化する必要があると思います。貴職は今後どのように市が対処していくべきとお考えですか?
(回答)事業者が今後どのような動きをするのか、これで引き下がるのかどうかは心配するところです。市として、再度河川占用に関して不許可を出した際、どのような理由を付記したのかが明らかではありませんが、控訴審の判決の内容から考えると、市長の職権乱用や規制条例違反に関しても、着工をめぐる明確な業者側の認識の間違いを指摘しています。また豪雨災害の多発や、全国でメガソーラーの崩壊等災害の被害も出ているという社会的背景から、河川占用に関しては新たな角度からの訴訟は難しいのではないかと思います。しかし、万一賠償金も含めた何らかの訴訟が提起されたとしても、伊東市としては粘り強く建設阻止のために知恵を集めてよく協議し,市民の意見も聞きながら闘って欲しいと考えます。
6.市議会はこの問題で6月30日に全員協議会を開き,その後の市議会でも質問をしてきましたが、問題が十分に解明されたとはいえません。市議会が市政と行政のチェック機能を果たすには、百条委員会あるいは少なくとも特別委員会を設置して、問題を解明し対策をとっていくことが必要と考えます。市長は政治倫理審査会(以下,政倫審)にこの問題の審査を要請しています。「特別委員会設置は政倫審の報告が出てからで良い」とお考えの議員の方々がいらっしゃるとも聞いていますが,政倫審はその構成員の選任者が市長であり、権限も限定されていることから、その審査には限界があると考えます。市議会が独自にその権限でこの問題を深く解明し,対策を講じていくことは,市議会の責務であり存在意義を発揮することと考えています。特別委員会設置について,貴職はどのようにお考えですか?
(回答)市議会にも政倫審にまず任せるという意見が多く聞かれますが、市長の確約書問題は、伊豆高原メガソーラー建設問題との関係性のなかで審査すべきものと考えます。政倫審は、市長が任命した委員で、諮問機関であるという限界があることはもとより、地域を災害から守ろう、海の産業資源を守ろうなどと立ち上がった市民の運動がどのようなものだったのか、また訴訟との関係で市長の行動はどうだったのか、市政のあり方としてどのような問題があるのかなど、経過への正しい理解のなかで、市政のあり方も含めて総合的に審査されるべき問題であると考えます。政倫審は政倫審、議会は議会でそのような観点からじっくり時間をかけて、事実の解明と対策を研究することが、その責務としても重要と考え、特別委員会の設置は必要と考えました。